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胸が紅 [06_短歌]

上っ面の言葉を交わしすれ違う恋人家族その他大勢

本当がまるで無いのになぜ刺したナイチンゲールの胸はくれない

表面張力肥大する星一つ縛れる嘘が行ったり来たり

面倒な人付き合いを弾いたら面倒な自分と付き合うばかり

いつまでも逞しくいて健康で友人無くても君なら平気
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父のことなど(短歌) [06_短歌]

父の日に孝行するはずの父はなし仏間で独り呟けば闇


言葉なく言葉失い向き合えば 遺影の父は親より親に


アイフォンとアイスノンに挟まれた頭で語る父のことなど


横たわる娘を支えるこの家の 大黒柱の位置さえ見えず


お父ちゃんが死んだら困るやろ?成仏できない父の心配
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短歌     五首 [06_短歌]

真夜中に時計の秒針胸を刺す丑三つ過ぎても消えないお化け

エアコンが冷房暖房間違える台風前の平熱微熱

忘れたい忘れたいと書くほどに思い出すため「寺山修司」

宛てのない手紙を書くより宛てのある手応えもあるコトバが欲しい

東京に空がないと泣く君の肩を抱く東京の人東京の雨
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 [06_短歌]


声でなく君の姿が欲しい日に空の十五夜指で突き刺す

ギター弾くピアノも奏でるその指が昨日を歌う夜の顔して

約束の指切りよりも正直な顔をしてると指差すあなた

その指が何本あるか数えてない暗い夜道を彷徨う身体

昨日だよ昨日だよって呼びかける明日の指切りできない二人

沈んだり浮上したり泳いだり地上と海をつなぐ中指

死ぬ時が来ても絡めた赤い糸蝶々結びくらいの束縛

夜の雲月を隠してどこまでも暴かないまま追いかけてきて

ひと声もあげず耐えて忍こと今生の恋すら戦国時代

対岸で君は返してくれという指が奪った記憶の手触り
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It格差。 [06_短歌]

パソコンのシステム用語の七並べ これ読めますか これ読めますか

独りでも楽しみ方なら知ってます不正アプリの読書コーナー

ネットすら関係なしに生きてます母の身元は世界でシェア

あなたの保険証売ってますスマートフォンの検索エンジン

父が死に葬儀屋ギフト屋駆けつけて四十九日に表札屋がきて

ツィッターお馴染みさんがひとりごと 呟いたなら直ぐお気に入り

誰も喋らない山手線の昼間に乗り込むスマートフォン

マルウェアがシカクになって入り込む大枚叩いて滅んだパソコン

IDで管理される私たち 名前で呼んで名前を呼んで

ガラケーのメール送信出来ぬ母みて高校生が(笑)を送信

かくれんぼオフィス街の地下に鬼 路地裏にも目隠しがない

今日のあなたを同期する くるくるまわって同調意識

見つけたものを独り占めに出来ない共有はいつの間にかの今日の優越

パソコンのIを叩く指一つ デリートされる愛と愛

データが消えてしまえば泣く人と喜ぶ人の喋る写真

筒抜けです タダ漏れです ウィルスないのに裸の王様
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 [06_短歌]

生きたいと願う父が死んだとき死にたいと思う私が産声あげる

サヨウナラサヨウナラって粉になるでんぷんみたいに翔ばされる骨

肉体の元素記号を燃やしても軽くならない質量 タマシイ

立ち上る狼煙のようなお線香まだここにいるまだここにある

この歌もこの歌も手向けるには早すぎた旅立つ父に春雨が降る

薄桜漆黒桜紅桜一斉に啼け一生に泣け

若き葉に季節奪われはなびらは紅の業を風に手渡す

学園門くぐり抜けて春は逝く桜並木は瞼の裏に

いろどりの傘に落ちる涙雨つられて連れられて思い出が通る

つなぐ手や背丈の高さのぬくもりは追いこせないの いつまでも父
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名詞 [06_短歌]

手紙という名詞一つで嘘をつき君はすべてを赦されている

真実に名前があるとするならばいつかは弾けるウルトラソウル

なぜ愛は中心に置かれて赤くなるデーターベースの中が夕焼け

種という記号一つで結ばれた僕らは美しい本の虫たち

みみたぶをかむようにしてあじわいたい ことば ことば やわらかくして

腕時計放り投げた昼下がり靴音が鳴る じぶん じぶん

運ばれる私の名札や荷札たち整理できない片づけられない
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夜を置く [06_短歌]

デジタルの文字の数だけ姿見せラインのように近くて遠い

退屈な私たちに夜を置くスマートホンの便利な夜明け

東雲を鎌で研いだ三日月は昨日噛んだ爪の歪さ

山間を染め逝く夕陽の亡骸が蝉の骸の瞳に映えて

鈴虫に夜の始まり告げられて彼岸花の紅さを慕う

眠れない眠剤の罪の濡れ衣をカプセルにして飲み込む朝日

一人部屋独りの黒に馴染ませた瞼の奥にもうひとつの黒

くちびるが乾いたままでため息を吐き出さないで吸い込む遊び

眠れない夜をこじ開け眠らせる裂いた空から取り出す朝日

蟋蟀の一夜を浸す涼しさに壊されてゆく扇風機たち

残照の残り火みんな星になれその身一つの光を纏え
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短歌日記 [06_短歌]

眠れない夜の隙間にとけてゆく名前を呼んでカムパネルラ

エアコンと冷蔵庫の音が響きあうここが私の夜の帝国

土曜日の夜は長いと靴が鳴る行交う夜のラブソングたち

憧れた花の都の片隅で小さな恋を育みたくて

夢を見るあの人の夢に夢を見る自分探しの入り口は私?

この恋にサヨナラなんていわせない見知らぬ顔して寄り添う二人

指先が湿っているの私たち見抜かないで私の太陽

愛、シテル、じゃない愛をする愛の意味すら知らないままで

死ぬまでに指折り数えることがある何回言えるの「好きだよ好きだよ」

生活や仕事で疲れる君のため背伸びしたキス言葉を添えて
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産土の母 [06_短歌]

目を開け未来開けと狛犬が口から発する「あ」から「ん」まで 早朝の神楽太鼓が一を打ち旅立つ時ぞと背中を押せり 産土に護られ生きたらこの町の千年杉の大きさは母
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