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日蝕 [02_詩]

腕には花の痕
ぬるくなった前頭葉から真昼が滴り
効き目のないエアコンの風が
指先を 揺らしている
デコルテの青白い呼吸が 唇から漏れる
白熱灯の陰り 閉ざした瞼から
上手に笑う あなたが潜む

 (ひらきなさい。怖れてはならない。
   二度目に死ぬことも。)

空から降ってくる太陽の重さと熱さを
女の水だけで蒸発させる宴が繰り返される

鏡が 私を吸い込み 奪い続け
肉体の輪郭は溶けて フラスコを濁してゆく
実験は繰り返され 私の眼は
アルコールランプの炎に 投げ込まれたまま
燃え続けている

夜 ちぎれた声 途切れて 聞こえる
あ、あ、あ、い、い、い、い、い、
その先が いえない

蛻になった私の部屋で 心臓を鷲掴みにして
笑う男がいる
 

(新しい太陽を植えてあげよう。
   今度からはこの光で動きなさい。)

真夜中に巨星がうめき声をあげては
流星になって滅ぶ
そのたびに私の子宮から月見草が咲き乱れ
腕にその残骸の痕を遺して逝く

喉から、あ、い、が、生えて滴り落ちる時
ああ、また、私の上で
無口な月が太陽を餓死させている
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