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おじさん万歳 [14_散文詩]

おじさん万歳



「ビジネスコート」  駅前の通勤ラッシュには きまってビジネスコートをまとった おじさんが背を丸くして 僕の前を通る 夢はあるのだろうか? 地味に働いて日々を凌ぐ 僕はそんな大人にはなりたくない 「平凡が一番なのよ」 と母さんは言う 平凡って何ですか 自分の利益や利潤だけで 友人をつくることですか 出世するために人を裏切ることですか ビジネスコートを着たあのおじさんたちも 僕と同じ時代があったはず 僕と同じことを考えていたはず 僕が怖いのは いつかあのビジネスコートを着た おじさんのように 背を丸めて生きること ********** 僕の頭が若さと青さで彩られていた時 見えない上司(こわいひと)の罵声にペコペコと 頭を下げる父を見て作った詩(わかげのいたり) 尻の青い若造だった時代が今頃 引き出しに一番奥からクシャクシャになって 顔を覗かせた 自分もビジネスコートを着て 早十年年が過ぎようとしている 丸めた背には メイクと上役の悪口ばかりに凝る OLへの小言とか 媚を売らなければ円滑にまわらない上下関係とか 期限に間に合わない見積書が眠る机とか 敬語が使えないくせにやたらメカに強い新人社員とかで おじさんの頭は大パニック そしてとどめに 積載量オーバーのトラック並みに膨れ上がった 結婚詐欺の女房の体への拒否権のない夜のお勤めやらで おじさん背中は、 だんだん萎んでいきました まさに 世界の中心で 「バカヤローー!!」を叫びたいのは 他の誰でもない おじさんなのです かつて おじさんは 怪傑ライオン丸が好きだった おじさんは 月光仮面が好きだった おじさんは 仮面の忍者赤影が好きだった だから世の奥様方 あなたたちが施しなさるほんの少しのお小遣いを チョビチョビためて月に一回だけせっせと通う コスプレパブのオネーチャンのところに ハッスルしに行くことを 「相変わらず、仕方ないわねぇ〜」と 笑って赦してあげてくださいませんか だっておじさんは いつまでたっても「スーパーヒーロー」に憧れる少年なんですから
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